「川を渡る」「少女器」「佛句」「金魚糞集」に続いて第5弾!
「イロハニ鳥獣図鑑」出版を記念しての展覧会
2014.3.20(木)ー 3.29(土)平日11−19時 土日祝13−17時
ATAMATOTE 2-3-3(東京都渋谷区西原2-3-3 TEL.03-5453-2911)
オープニングパーティーは 3.20(木) 18:00より
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今回は毛筆からはなれて、竹ペン、葦ペン、モンブランの万年筆等を使った作品づくり。
いつもとはがらりと趣が変わります。
是非覗きにきてください。
ホルヘ・ルイス・ボルヘスが世界の幻獣に魅せられて『幻獣事典』を著したのは1967年(68歳)。わたしが20歳の時である。マルガリータ・ゲレロとの共著となっているが、資料集めなどを手伝わせたのだろう。レオ・レオーニの『平行植物』は、1976年(66歳)に世に問うている。わたしは今67歳。この年頃になると、少々人間関係の煩雑さにも飽きて、幻想の鳥獣や、空想の植物にうつつを抜かし出す。現実逃避というよりも、もうひとつの世界への誘惑なのだと思う。わたしが一番初めに幻獣に魅せられたのは、中国最古の空想地誌『山海経(せんがいきょう)』であった。まったきの中華思想で、周辺諸国に棲む蛮人を東夷、西戎、南蛮、北狄などと蔑し、その姿はことごとく妖怪怪獣として描かれている。しかもそれを喰らうと総て薬膳となる。だからなんでも食ってしまう。世界最古のカンニバリズム嗜好誌でもある。しかし、人間の想像力というのは、邪悪なほど眩惑的である。空想であればそうでなければならない。現実ではない空虚さを埋めるのは、邪悪を滑稽に描くことだと思う。ここに登場する48頭の珍獣は、わたしに蔑視され、凌辱され、愚弄されるほど、よろこぶ。それが幻獣の好餌なのである。そんな気持ちが解るのも、わたし自身が少しく珍獣の心と軀を持っているからなのかも知れない。
2014年2月 榎本バソン了壱