ヨシムラヒロム近作発表会
日々、粛々と生活をしている。粛々というからには派手な行動は慎むべきだ。だから趣味も散歩ときている。町の路地や小道を意味もなく歩く。最初は無意味に作られたルートがだんだんと意味のあるものに変わっていく。そうなるとその行為は散歩ではなくなり巡回となる。
毎日、巡回をしていると1つ1つのスポットに愛着を感じる。誰が住んでいるか分からないボロボロの民家、破れた選挙ポスター、コンクリートに打ち付けられた鉄の看板、そしてアパートの表札。すべてがいい。
いいものは良い。いいものは欲しくなる。当初は写真に治めたりしていたが私もモノを作品にすることに人生の多く時間を費やしている人間なので何か表現をしたいと考えた。そして夏。青山の古本屋を散策していると「拓本入門」という一冊の本に出会う。この本が運命の1冊だった。その日を境に私は巡回ルートにあるアパートの表札の凹凸を発見しては、和紙を水張りし墨を含んだタンポを叩いて回った。デザイン的にも価値はない。物質的にも価値はない。しかし、その無価値具合に私は、もののあはれを感じるのだ。
ヨシムラヒロム
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